多摩丘陵の雑木林

イ)川崎の雑木林概観

川崎市の樹林で最も広い面積を占めているのは、いわゆる雑木林です。
雑木林の特徴は季節変化に富み、生物多様性が高く、川崎市の自生動植物を育んでいます。
雑木林(コナラ林)の高木層
雑木林の高木層には、コナラ、クヌギ、イヌシデ、エゴノキ、ミズキ、クマノミズキ、ホオノキ、クマシデ、アカシデ、ハリギリ、ヤマザクラ、イヌザクラ、ウワミズザクラ、ハンノキ、コブシ、 ケヤマハンノキ、マルバアオダモ、クサギ、ニガキ、カマツカ、イロハモミジ、アサダ、ムクノキ、アブラチャン、アカメガシワ、シラカシ、アラカシ、ウラジロガシ、アカガシ、モチノキ、 シロダモ、アカマツ、モミ、植栽起源のスギ、ヒノキ、サワラ、ヤシャブシなどが見られます。
クヌギ−コナラ群集
日本には環境の違いでさまざまな種類のコナラ林があります。
イヌシデ、コナラ、クヌギ、シラカシ、ヤマコウバシ、ウグイスカグラ、イボタノキ、カブダチジャノヒゲ、スイカズラ、キンラン、シュンラン、オオバジャノヒゲ、カニクサ、 リュウノウギクなどの構成種によってクヌギ−コナラ群集と規定することができます。
クヌギ−コナラ群集は主に関東地方と静岡、山梨県の標高600m以下の丘陵や台地に分布しています。
コナラ林
コナラ林は自然林と異なり、人間がいろいろと管理してできた樹林で、二次林とも呼ばれます。
1960年代までの雑木林は主に、薪や炭の材料を採るために利用されていました(薪炭林)。
コナラ林の樹木が 10 mあまりに成長すると根元から伐採して、幹は木炭に、枝葉は薪に使いました。
伐採の季節は樹木の水分が少なくなり、農業の暇な冬です。
江戸に近い多摩丘陵では木炭の生産が盛んで、中でも黒川炭は有名で昭和時代まで生産されていました。
伐採後のコナラ林は春に萌芽が発生し、やがて10数年も経てば、また立派な雑木林になるのでした(萌芽更新)。
そのためには補植、下草刈り、低木伐採、つる植物の除去などの世話が必要です。
下草刈りや枝うちで集めた「もや」も燃料に、落葉は熊手で集め、肥料やさつまいもの苗床に使われました。
落ち葉を踏み固めて水を打つと 2〜3 日で発酵して、湯気がたつほど暖かい温床になりました。 春先、水田を耕す前に、落ち葉を田圃にすきこんでいました。
アズマネザサは作物の立派な支柱となりました。冬に北風を防ぐ風除けにもアズマネザサは役に立ちました。
カマツカは鎌の柄に利用していたことからの名前とされます。
自然に生えるアカマツは大きく育てて、建材に利用しました。
林の中のサンショウ、ミツバ、ゼンマイ、ワラビなどは食膳をにぎわしてくれました。
秋のキノコはその土地でなければ味わえない食材でした。
野生のクリの実は保存食として乾燥してかち栗となりました。
林の中には薬草も生えます。ドクダミは万能薬として、ニワトコは接骨木ですから打ち身や打撲など傷薬として、ニガキは良薬口に苦い胃腸薬でした。
ヒサカキは宗教的行事に使われました。
このように、雑木林は農家の生活と密接に関っていました。
生活エネルギーが石油に代わったことで、萌芽更新という伝統的な管理が行われなくなり、雑木林の高木層は 40 齢を超える直径 30cm超の大木が多くなりました。

伝統的管理がされていた雑木林(麻生区黒川のコナラ林)

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